統合失調症とは
思考や行動、感情をきちんとまとめていく脳の働きが長期にわたって低下する精神疾患です。すなわち「統合(思考をまとめる機能)」が「失調(低下)」していることを意味しているのです。
統合失調症では、幻覚や妄想、興奮などの激しい症状が出現することが多く、家族や社会で生活を営む機能に影響が出て、周囲の人々との交流が上手くいかなくなるケースがよく見られます。
若い人に見られることが多く、特に15~25歳ぐらいの発症率が最も高くなっています。性別では、男性がやや多く、女性の場合の発症年齢は若干高めです。
主な症状
- 陽性症状(幻覚、妄想)
- 陰性症状(気分や意欲の落ち込み など)
- 認知機能障害(集中力や記憶力の低下 など)
陽性症状
統合失調症の代表的な症状です。幻覚や妄想は他の精神疾患でも認められるのですが、統合失調症の幻覚や妄想には一定の特徴があります。
このうち「幻覚」は、実際にはないものが感覚として感じられることです。得体の知れない声が聞こえたり、他人が自分の悪口を言っているように聞こえたりすることが典型的なケースです。幻聴との対話で独り言をつぶやいたり、にやにや笑ったりするので、周囲の人からは奇妙だと思われ、患者様ご本人は精神的に疲弊します。
「妄想」は、明らかに間違った内容であるのに、そのことを信じてしまい、周囲の方(家族や会社の同僚など)が訂正しようとしても受け入れられない状態です。具体的な妄想の内容は、「誰かが常に自分を監視している」、「ある人物が自分に対して好意を持っている」、「繁華街ですれ違う人の中に自分を襲おうとしている敵がいる」など多岐にわたっています。
幻覚・妄想の特徴
統合失調症の幻覚・妄想には2つの特徴があります。
まず一点目は、自分と他人との人間関係において幻覚などが生じるという点です。自分に対し、「ある他人が何か悪いことをしようとしている」などと思い込むわけです。上述のケースであれば、「自分のことを監視し、陥れようとしている人(他人)」、「自分に好意を持っている人」という妄想の主体が存在するのです。
二点目は、気分に及ぼす影響です。幻覚や妄想の多くは、患者さんにとっては「真実のこと」として認識されています。上述のケースならば、「自分を監視している妄想上の人」が存在すると思い込む。そして、これを無視できなくなり、「何か対策を講じなければ(その他人によって)自分が大変なことになる」などと考えてしまうのです。
陰性症状
陽性症状とは逆に、「存在するはずのもの」が低下している状態です。喜ぶ、怒る、悲しむなどの感情が乏しくなり、表情の変化も少なくなります。
また、何かを行動しようとする意欲が減退し、関心が薄くなります。身だしなみに無頓着となったり、他人とのコミュニケーションを避けることもあります。
認知機能障害
物事を記憶したり、注意を集中したり、計画を立案したり、判断したりする能力に支障が生じている状態です。
統合失調症の治療法
治療の柱は、薬物療法と精神科リハビリテーションです。用いられる薬剤は、主に抗精神病薬で、陽性症状の改善に効果が上がることが多いです。その他、症状に応じて睡眠薬や抗不安薬、気分安定薬などを用いることもあります。
精神科リハビリテーションは、病気の知識の習得、ストレス対処法の学習、人間関係をうまく進める練習、記憶力や集中力をつけるための認知機能訓練などを通じて症状の改善を目指す治療法です。現在の医学では陰性症状や認知機能障害を根本的に改善する薬が開発されていないこともあり、精神科リハビリテーションは統合失調症の重要な治療法となっています。